友人との再会
nao
ぼくは一人の男性と向かい合っていた。ぼんやりと虚空を見つめている、どうにも見覚えのある男性。誰だろう、と首を捻っていると、不意に郷愁にかられた。それですべてを思い出した。
「その顔、誰かと思ったら、君じゃないか!」
言ってから笑顔を作って君を見る。何年も前に親しくしていた友人、いわゆる幼馴染というやつだった。まさか、こんなところで会うなんて。
「あ、ああ、お前か! 久しぶりだな」
程なくして彼もぼくのこと思い出したらしい。顔に笑みが広がっていった。懐かしさのあまり涙すら出そうだった。子供の頃、緑あふれる大地を一緒に駆け回ったことは、今でも記憶に残っている。
「本当に久しぶりだね。元気だったかい」
「元気だったとも。昔から元気なことだけが俺の自慢できることだったからな」
「そりゃあいい。君が引っ越す前に、隣に住んでいた奴がいただろう。あいつが最近電報を送ってきたんだ。なんとも、ちょっとした病気にかかってしまったというんだ。今ごろはママに優しく看病されているだろうさ」
「はは、いい身分だな。羨ましい」
「同感だ。ぼく僕も病気で家にいたいね」
皮肉るように二人で大声で笑い合う。
笑い声が収まると、君が思い出したように言った。
「あの頃のお前は失恋ばかりだったろう。今はどうなんだ。恋人とかはいるのか」
「嫌なことを聞くね。昔からモテないことがぼくの自慢できることだったからな。安心してくれ。今の僕も孤独な人生を送っているよ」
「ははっ。最高だよ。笑えるなあ」
「うるさい、ばか。じゃあ、君はどうなんだ」
「お前と一緒にするなよ。最愛の人を見つけ、子供も生まれ、今じゃ立派な父親さ」
「それは幸せだな。そうか、家庭があるのか……」
「ああ、あるんだよ。家で俺を待っているのさ」
「そうか……」
無意識のうちに拳を握り締めた。
そんなぼくを見て、君は心配するような声で言った。
「お前の後ろの奴がうるさいけど、大丈夫なのか。急いだ方がいいんじゃないのか」
「……そうだね。仕方ない。もっと君と話したかったよ」
「気にするな。じゃあ、お前は、元気でな」
「ああ、じゃあな」
別れの言葉を口にする。
そしてぼくは銃を構えた。
震える手で銃口を君に向けて、引き金を引いた。
パンッ、という銃声が、閑静な住宅街に響き渡った。
血を流して地面に倒れ伏せた君を見つめ、ぼくはがっくりと膝をついた。
仕方なかったのだ。後ろに立つ上官が「やれ」と言ったから撃ったのだ。敵兵を殺せと命令したから撃ったのだ。ぼくは捕虜になった敵兵をわざわざ殺す必要なんてないと思っていたけれど、従わなければぼくが殺されてしまうのだ。
どうしてこんなことになったのだろう。どうして戦場で出会った相手が、よりにもよって君だったのだろう。
ぼくは地面に手をついて大声で叫んだ。
涙を流して、喉が枯れてしまうまで叫び続けた。